焼付塗装とは?工程やメリット・デメリット、製品別のサンプル仕様を紹介
焼付塗装は、金属製品を中心に幅広く採用されている工業塗装手法の1つです。耐久性や耐候性の確保に効果的ですが、十分な性能を発揮するには、使用する塗料や加熱温度といった条件設定と適切な管理が必要です。
本記事では、焼付塗装で使用される塗料の種類や対応可能な素材、工程の流れを解説しています。また、焼付塗装のメリット・デメリットや実施する際の注意点も紹介しています。品質トラブルの防止や品質向上を達成するためにも、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
焼付塗装とは
焼付塗装とは、塗料を加熱し、化学反応により硬化させる塗装方法です。自然乾燥とは異なり、樹脂の反応硬化によって塗膜の硬度・耐久性・密着性・防錆性といった機能性を向上させられます。粉体塗装も焼付塗装の一種であり、より強靭な塗膜を形成する際に有効です。
焼付温度と焼付時間は、塗料カタログの仕様と製品温度(T-time)管理を基準に行います。また、焼付の際は炉内の温度ではなく、製品温度を基準にすることが重要です。
焼付塗装を行う際に活用される加熱炉には、以下のような種類があります。
- 熱風循環
- 遠赤外線
- ガス直火
- 電気
加熱炉の種類や製品の材質・質量・膜厚によっても到達温度は異なるため、最適な設定が求められます。
塗料の硬化方式として、常乾塗装や2液反応硬化塗装なども挙げられます。しかし、塗装する目的・環境・素材に応じて最適な方法は異なるため、適切な塗装方式を選定することが品質向上には不可欠です。
焼付塗装で使用される代表的な塗料
焼付塗装では、用途や性能に応じて複数の樹脂系塗料が使用されます。工業塗装で使用されやすい代表的な樹脂として、以下の3種類が挙げられます。
【メラミン樹脂】
- 焼付塗装における代表的な塗料
- 一般的な工業塗装に適しており、耐久性や耐候性、耐酸性なども標準的な性能がある
- 価格は比較的安価
- 紫外線に弱い傾向にあり、屋外で使用される鉄骨や製品への塗装は注意が必要
- ただし、アクリル変性メラミンなどグレードによっては耐候性に強みを持つ場合もある
- 期待耐用年数は3〜5年程度
【アクリル樹脂】
- メラミン樹脂同様、比較的価格が安価
- 高発色で屋外製品にも多々用いられる
- 常温型と焼付型の塗料がある
- 焼付型の場合、焼付温度レンジは140〜180℃程度、約20〜30分で硬化する
- ただし、焼付温度や時間は塗料仕様や製品の材質などによって変わる場合もあるため、条件検討をしたうえで社内標準などを設ける
- 期待耐用年数は5〜8年程度
【フッ素樹脂】
- 樹脂のなかでも比較的グレードが高く、耐候性や耐食性に優れている
- 紫外線や酸性雨などへの耐性もあるため、工場塗装や建材、高速道路の遮音壁などにも用いられる
- はじきや密着不良を防ぐため、プライマーの塗布が必要
- 下地材質にあわせた下地処理を行ったうえで、エポキシ系やフッ素専用のプライマーを塗布する
- 高価にはなるが、期待耐用年数が15~20年程度と長期間であるため、トータルコストを抑えやすい傾向がある
上記は一般的な特徴であり、グレードによっても異なります。そのため、要求される性能や機能性に合わせ、適切な塗料を選定することが重要です。
焼付塗装の基本的な工程
焼付塗装では、塗膜の性能を最大限引き出すために、複数の工程で実施されます。基本的な工程の概要は以下の通りです。
- 前洗浄:ゴミや古い塗膜を大まかに取り除く。高圧洗浄などで行われることが多い
- 脱脂:主に油分を除去する。塗料の密着性を高めるために行う
- 水洗:洗浄液で脱脂剤などを洗い流す
- 素地調整・活性化:ブラストやサンディング、リン酸亜鉛化成などで表面に凹凸をつけ、アンカー効果を付与する。酸活性化による酸化皮膜の除去、濡れ性向上など、塗装を行いやすくする目的で実施する
- 水洗:洗浄液で素地調整時に発生した粉じんなどを除去する
- 化成:素地の種類ごとに適した化成処理を行う。アルミであればクロムフリー化成、鉄はリン酸亜鉛が一般的である
- 水洗:化成後の洗い流しを行う
- 乾燥:水洗後の水分を乾燥させる。水分残りは塗装不良の原因になりかねないため、非接触系による基材温度の管理を行い、十分に乾燥しているかを確認する
- 塗装:下塗り→中塗り→上塗りで素地に塗装する。総膜厚は塗料の種類や塗装の目的によって異なる
- 焼付:製品温度に適した焼付炉の温度と時間を守る。焼付炉の温度管理だけでは不十分であるため、接触式および非接触式の温度計測や温度マッピングを活用して、品質管理を行う
焼付塗装の品質を向上させるには、下地に合わせて塗料選定や素地調整などを行う必要があります。
焼付塗装が可能な素地と不可能な素地
焼付塗装は高温で塗膜を硬化させる手法であるため、素地が熱に耐えられるかどうかが対応可否の判断基準になります。焼付塗装の実施可否を以下の表にまとめたので、参考にしてください。
|
区分 |
主な素材 |
注意点 |
|
可能 |
鉄、ステンレス、アルミニウム、真鍮、亜鉛、銅、マグネシウムなどの金属全般 | ・前処理が不十分だと密着不良や錆が発生するため、研磨や脱脂が必要
・亜鉛など金属種によっては、一般的な焼付温度よりも低い温度で行わなければ溶けるリスクがある |
|
不可能 |
プラスチック(ABS、ナイロン、ポリカーボネート、PVCなど)、木材、ゴム、カーボンなどの熱に弱い素材 | ・高温で変形・溶解するため、焼付塗装は不可能
・ウレタン塗装やUV塗装といった常温硬化型の塗装が用いられる |
基本的に、熱に強い金属素材のみが焼付塗装に適しています。
焼付塗装のメリット・デメリット
焼付塗装は、耐候性や防錆性に優れる一方で、コストや外観に影響が出るといった注意点もあります。採用判断にあたっては、メリット・デメリットの両面を理解しておくことが重要です。
焼付塗装のメリット
焼付塗装の主なメリットは、以下の4点です。
- 硬化時間短縮:30分ほどで塗料の硬化が完了するため、工期短縮や短納期対応が可能。ただし、製品や焼付炉の条件などによって異なる
- 高塗膜硬度:化学反応による強靭な塗膜形成が可能であり、耐久性向上の観点からランニングコスト削減にもつながる
- 密着性・耐久性向上:化学反応によって硬化させるため、常乾塗装よりも塗料が密着しやすく、耐久性や機能性も向上する
- 外観の均一性:均一で厚い塗膜を形成できるため、表面のキズなども目立ちにくい
ただし、これらのメリットを安定して得るには、適切な下地処理とT-time(製品が所定の温度に達してからの焼付時間)の管理が必要です。また、塗装ブースの温湿度管理や清浄度(粉塵や汚れの除去)の維持も、仕上がり品質に大きく影響します。
焼付塗装の効果を最大限に活かすためには、こうした環境・工程の管理が重要です。
焼付塗装のデメリット
焼付塗装は優れた機能性を発揮する一方で、以下のようなデメリットがあります。
- 高額な装置投資:焼付塗装専用の加熱炉や換気設備などが必要であるため、初期コストがかかる
- 大型ワークの炉制約:焼付炉の幅や高さ、奥行きなどに製品が収まらなければ塗装ができない。設備が限定される可能性もあり、場合によっては特注サイズの設備が必要となるケースもある
- 熱影響:材質や焼付温度によっては歪みや焼戻し変化が生じる可能性がある
- エネルギーコスト:加熱によるガスや電気代などといったコストが発生する
- オーバーベーク・アンダーベークによる外観や物性への影響:黄変・脆化・密着低下・光沢変化などを引き起こす場合がある
また、熱に弱い素材や組立部品が混在している場合は、上塗りのみ常乾塗装にするなど、工程分離を検討することもおすすめです。
焼付塗装の品質を安定させるには、製品に適した工程設計が不可欠です。自社での設計に不安がある、相談したいことがある場合は、弊社で対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
【製品別】焼付塗装を行う場合の一般的な仕様
焼付塗装は建材や自動車部品、電機機器など幅広い製品に活用されていますが、使用する塗料や素地によって焼付温度・時間・膜厚の条件が異なります。以下に、代表的な製品・用途に対する焼付塗装の目安仕様をまとめました。あくまでも目安であるため、実際に焼付塗装を行う場合は必ずメーカーの技術資料で使用を確認したうえで実施してください。
|
製品分野 |
具体例 |
焼付塗装の 目的 |
使用塗料 (代表例) |
焼付温度 (目安) |
乾燥時間 (目安) |
膜厚 (目安) |
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建築・建材 |
・アルミサッシ
・手すり ・鉄骨部材 |
・耐候性
・耐食性向上 ・外観保持 |
ポリエステル系粉体塗料 |
160〜200℃ |
10〜20分 |
50〜80µm |
|
自動車・輸送機器 |
・ホイール
・バンパー ・フレーム |
・耐摩耗性
・耐衝撃性 ・防錆性 |
アクリルメラミン樹脂
エポキシ系粉体塗料 |
140〜180℃ |
20〜30分 |
30〜50µm |
|
家電・OA機器 |
・冷蔵庫外装
・洗濯機パネル ・PC筐体 |
・美観
・防汚性 ・量産性 |
ポリエステル系樹脂
エポキシポリエステル粉体塗料 |
160〜180℃ |
15〜25分 |
20〜40µm |
|
産業機械・設備 |
・工作機械カバー
・電気制御盤 ・農業機械外装 |
・耐薬品性
・耐久性 ・防錆性 |
エポキシ系粉体塗料
ポリエステル系塗料 |
160〜200℃ |
15〜30分 |
40〜70µm |
|
日用品・雑貨 |
・自転車フレーム
・金属家具 ・照明器具 |
・装飾性
・傷に強い ・コスト効率 |
ポリエステル系粉体塗料
ハイブリッド型粉体塗料 |
160〜190℃ |
10〜20分 |
50〜80µm |
熱容量が大きいワークでは消音時間が長くなりやすいですが、炉設定温度を上げるのではなく、保持時間の調整によって対応するのが原則となります。
また、粉体塗装は厚膜になりやすいため、膜厚や昇温時間の管理を誤ると外観不良や機能低下を招くリスクがあるため、注意が必要です。
焼付塗装を行う際の注意点
焼付塗装を行う際は、以下の点に注意することで塗装不良や焼付ミスを防止できます。以下のポイントを標準仕様として定め、施工ごとに管理することで、品質を維持したまま焼付塗装を行えます。
製品温度での適切な温度・時間管理を徹底する
オーバーベークは、塗膜の黄ばみや早期劣化につながるため、製品温度での適切な温度・時間管理が求められます。管理が不十分だと、ツヤの低下による仕上がりの変化や硬化不足になるリスクも生じかねません。
また、過度な焼付は熱が揮発して内部硬化ができないため、熱電対貼付による温度プロファイル測定を導入することで、適切な温度・時間管理を行えます。
焼付炉の状態を管理する
ゴミやほこりが焼付炉に残った状態で塗装すると、塗膜に付着して外観に影響が出ます。そのため、焼付炉の洗浄やフィルター管理、エアブロー、除じん作業を標準化することが重要です。
粉じんや異物混入防止に向けて焼付炉の状態管理を工程内検査として組み込み、品質管理を行いましょう。
素材の特性を理解する
同じ金属であっても種類によって特徴は異なるため、それぞれの素材の特性理解は重要です。例えば、アルミニウムは熱膨張による製品のゆがみやひび割れ、亜鉛ダイカストはアウトガスによる気泡が発生する可能性があります。
このように、特性を理解して素材に応じてプリベークや孔埋め、面取りなどの対策を行うことで、塗装不良を防止可能です。
下地処理の適合を把握する
下地の化成処理や粗さ、洗浄度によって焼付塗装の密着度や仕上がりは変わります。素地に応じた適切な下地処理を行うと同時に、塗装までのリードタイム管理を徹底することが、焼付塗装の品質向上には不可欠です。
まとめ|焼付塗装とは加熱による化学反応で塗料を硬化させる方法
焼付塗装とは、塗料を高温で加熱し、化学反応によって塗膜を硬化させる塗装方法です。優れた密着性・耐久性・耐候性を付与できる一方で、素地や塗料に応じた工程管理の徹底が品質に影響するため、製品に合わせた標準化が求められます。
ただし、焼付塗装は製品によっては専用設備が必要となるため、自社での導入が難しい場合は専門業者への外注も有効な選択肢です。
弊社では、工業塗装向けの焼付塗装を実施できるため、大型のワークであっても対応可能です。自社での焼付塗装が困難な方や、工数削減のために外注化を検討している方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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