防錆塗装とは?JIS規格や塗料の選び方について解説

防錆塗装は、金属製品を錆や腐食から保護するための処理工程です。防錆塗装に使用する塗料は多くあり、使用環境や素材によって最適な塗料や塗装仕様は異なるため、目的に合った選定が求められます。

本記事では、防錆塗装の基礎知識に加え、JIS規格にもとづく塗料の種類や特徴、ISO規格別の選び方についてわかりやすく解説しています。防錆塗装を実施する前に確認すべきポイントも紹介しているので、仕様について悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

防錆塗装の基礎知識

防錆塗装は、金属を錆や腐食から守る重要な処理工程です。ISO規格により腐食基準が定められており、適切な仕様選定に役立ちます。ここでは、防錆塗装の基本とISO規格について、解説します。

防錆塗装とは

防錆塗装とは、鋼材やアルミニウムなどの金属表面を錆や腐食から保護するための塗装処理です。金属は時間の経過とともに錆が発生する素材であるため、防錆塗装が求められます。一般的に、防錆塗装が果たす役割は以下の3つです。

  • 塗膜の形成により、錆の原因となる水や酸素などの腐食因子を遮断
  • プライマーなどの犠牲防食による、金属素地の腐食抑制
  • 紫外線や熱などの環境要因による耐候性の向上

このような性能から、橋梁や鉄骨構造物だけでなく、塩害被害が予想される湾岸付近の設備や一般的な住宅のベランダなど、金属を守るために幅広く施工されています。

防錆塗装を行う際の腐食基準

防錆塗装の仕様を決める際は、ISO(国際標準化機構)が定める腐食環境の基準を参考にすることで、環境に適した塗料のグレードを選びやすくなります。腐食環境はC1からC5までの5段階に分類され、それぞれに適した塗装仕様が求められます。

ISOが定める腐食環境の基準と施工場所の例は、以下の通りです。

分類レベル施工場所例
C1極めて低い 学校や店舗など
クリーンルーム内の精密測定機器
恒温恒湿室で厳重に管理された工作機械
C2低い 大気汚染の影響が少ない地域、農村部などの地方
結露の生じやすい建物
一般的な組立工場内(暖房設備あり)
工具倉庫、軽作業用の機械設置場所
C3中程度 大気汚染の影響を受けやすい都心部や工業地帯
塩分の少ない沿岸地域(食品加工工場など)
一般的な金属加工工場内(切削油ミスト、溶接ヒュームなどが発生)
機械部品の加工ライン
C4高い 工業地帯や塩分の影響を受けやすい沿岸地域
プールや化学工場
屋外に設置される大型産業機械(クレーンなど)
湿度の高い鋳造工場内
切削油のミストが非常に濃い専用機エリア
C5非常に高い 湿度が高く、塩分濃度が高い地域
ビルや結露の発生しやすい建物
重工業地帯の屋外に長期間保管される大型工作機械
海沿いの造船所などにある機械部品

【富士商事のワンポイント情報】

富士商事ではISOの規格にもとづいて、以下の防錆塗料の選定を行った例があります。各塗装会社で仕様は異なりますが、いずれにしても重要なポイントは施工のミスを無くし、塗装不良を起こさないことです。

C-1 ジンクリッチペイント+エポキシ樹脂系+ポリウレタン樹脂系
C-2 ジンクリッチペイント+エポキシ樹脂系+ポリウレタン樹脂系
C-3 ジンクリッチペイント+エポキシ樹脂系+ふっ素樹脂系
C-4 ジンクリッチペイント+エポキシ樹脂系+ふっ素樹脂系
C-5 ジンクリッチペイント+(厚膜型)エポキシ樹脂系+(厚膜形)ふっ素樹脂系

防錆塗装で一般的に使用される塗料の種類

防錆塗料はメーカーによって機能・特徴が異なるため、防食環境基準や施工環境、目的に沿って仕様を決めることが重要です。また、JIS規格にもとづいて塗料を選定すれば、品質と安全性を確保した防錆塗装を実施できます。

ここでは、代表的な防錆塗料3種類とJIS規格における防錆塗料の種類、ISO規格別の塗料選びの目安について解説します。

防錆塗料(錆止め塗料)はおもに3種類

代表的な防錆塗料として、「油性系」「合成樹脂系」「エポキシ樹脂系」の3種類があります。それぞれの特徴は以下の通りです。

種類特徴
油性系 金属素地への付着性が高い
厚膜形成によって優れた防錆性を発揮する
乾燥に時間がかかり、湿度や気温の影響も受けやすいため、工期や施工環境に注意する必要がある
合成樹脂系 乾燥が早いため、紫外線や外的要因にも比較的強い塗膜を形成できる
防錆性はやや劣るため、軽度な腐食環境や下塗りとの併用で使われるケースが多い
エポキシ樹脂系 高い防食性と耐薬品性を持ち、素地への浸透性に優れる
耐久性が求められる用途で選ばれやすい
紫外線に弱いため、上塗りによる保護が前提となる

高い防錆性と工期への影響が少ない点から、エポキシ樹脂系塗料を使用するケースが多くなりますが、実際の使用環境に応じて選定することが重要です。

【富士商事のワンポイント情報】

とある企業様にご提案した防錆塗装仕様の例を紹介します。

メーカー塗料名称膜厚
関西ペイントSDジンク75μm
関西ペイントエスコST120μm
関西ペイントレタン600030μm

JIS規格における防錆塗料の種類と特徴

防錆塗装においては、JIS(日本産業規格)に準拠した塗料を選定することで、一定の品質と性能を確保しやすくなります。JISでは対象となる材質や環境に応じて適した防錆塗料を定めています。

JIS規格で定められている代表的な9種類とそれぞれの特徴は、以下の表の通りです。

規格番号規格名称特徴
JIS K 5551構造物用さび止めペイント橋梁、鉄骨など大規模構造物向け
JIS K 5621一般さび止めペイント 汎用的な錆止め塗料
一般的な鉄部や鋼材など幅広く用いられる
JIS K 5633エッチングプライマー アルミニウムや亜鉛メッキ鋼板など、塗料が付着しにくい素材に使用される
JIS K 5552ジンクリッチプライマー 犠牲防食に特徴があり、鉄の保護に優れている
JIS K 5553厚膜形ジンクリッチペイント ジンクリッチプライマーより強力な防錆効果を発揮する
JIS K 5623亜酸化鉛さび止めペイント 鉛が含まれているため、環境負荷の観点から使用は減少傾向にある
JIS K 5625シアナミド鉛さび止めペイント シアナミド鉛が含まれ、環境への配慮から使用は減っている
JIS K 5629鉛酸カルシウム錆止めペイント 鉛酸カルシウムを含む錆止め剤
鉛系の塗料で、高い防錆効果を持つ
JIS K 5674鉛・クロムフリーさび止めペイント 環境への影響を考慮した防錆剤
近年、主流となりつつある
JASS 18 M-109変性エポキシ樹脂プライマー 建築工事標準仕様書(JASS)に規定される塗料
コンクリートやモルタル、鉄筋などに用いられる

【ISO規格別】防錆塗装を行う際の塗料選びの目安

防錆塗装を行う際は、ISO規格で定められた腐食環境(C-3〜C-5)に応じて、適切な塗料構成の選定が重要です。以下に代表的な構成と期待耐用年数を示します。

ISO規格C-3C-4C-5
期待耐用年数15~20年15~20年
塗料構成 下塗り:変性エポキシ樹脂
上塗り:フッ素樹脂
プライマー:無機
下塗り:エポキシ樹脂
上塗り:フッ素樹脂

プライマー・下塗り・上塗りだけでなく、場合によっては下塗りを2回に分けて異なる塗料を使用するケースや、中塗りを行う場合もあるため、必ずしも表の構成になるわけではありません。

C-4、5は塩害のリスクも考えられるため、亜鉛の含有量が多く、鉄のサビを防ぐ役割を持つジンクリッチプライマーを用いて下地処理を行うケースが多い傾向にあります。

なお、塗料構成や素地との相性が不適切な場合は塗膜剥離や塗料不良につながるリスクもあるため、使用環境を十分にヒアリングしたうえで、適材適所の塗料を選定することが不可欠です。

【富士商事のワンポイント情報】

富士商事は塗料商社でありながら自社での塗装も行っているため、過去の実績により累積されたノウハウがあり、お客様のターゲットコストに応じた仕様を提案可能です。また、塗料商社として数多く防錆塗料を取り扱ってきたため、現在お使いの防錆塗料を切り替えることでのコストダウンもご提案可能です。

下記に仕様の一例を紹介します。

【防錆塗装の施工仕様例1】

塗装工程塗料(関西ペイント)膜厚
第一層 下塗りSDジンク50075μm
第二層 下塗りエスコ グレー60μm
第三層 中塗りセラテクトU中塗 淡彩30μm
第四層 上塗りセラテクトU上塗り 37-60D25μm

【防錆塗装の施工仕様例2】

塗装工程塗料(日本ペイント)膜厚
プライマー JIS K 5633
2種エッチングプライマー
(ビニレックス120アクチブプライマー エコ)
15μm
第一層 下塗り JIS K 5674
鉛・クロムフリー錆止めペイント
(速乾PZヘルゴンエコ)
35μm
第二層 下塗り JIS K 5674
鉛・クロムフリー錆止めペイント
(速乾PZヘルゴンエコ)
35μm
第三層 中塗り フェノール樹脂塗料
(サルホタイト)
25μm
第四層 上塗り フェノール樹脂塗料
(サルホタイト 39-60D)
25μm

【防錆塗装の施工仕様例3】

塗装工程塗料(ジャパンカーボライン)膜厚
第一層 下塗 厚膜型有機ジンクリッチ塗料
カーボジンク658J
35μm
第二層 下塗 厚膜型有機ジンクリッチ塗料
カーボジンク658J
35μm
第三層 中塗 浸透性厚膜型エポキシアルミ樹脂塗料
カーボマスチック15HB メタリックレッド
100μm
第四層 中塗 浸透性厚膜型エポキシアルミ樹脂塗料
カーボマスチック15HB メタリックグレー
100μm
第五層 上塗 厚膜型ポリシロキサン樹脂塗料
シロキサンエースHB
50μm

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防錆塗装を行う前に確認するべき3つのポイント

防錆塗装を確実に仕上げるためには、塗料の選定基準に加えて、事前に確認すべきポイントが3つあります。確認が不十分だと、性能不足や施工不良につながるリスクが生じるため、注意が必要です。

  • 素地の状態
  • 防錆塗料の溶剤
  • 防錆塗料の溶剤

1.素地の状態

防錆塗装を確実に機能させるためには、塗装前の素地の状態確認が重要です。錆の進行具合や素地の劣化具合に応じて、必要な下地調整の工程や範囲が大きく変わります。下地処理は高圧洗浄→ケレン→洗浄→脱脂→塗布→乾燥の順番で行われることが一般的です。

なかでもケレンは塗料の付着に大きく影響する役割があり、素地の状態に応じて以下の4種類を適切に使い分ける必要があります。

  • 1種ケレン:旧塗膜が全面的に劣化しており、広範囲に錆が広がっている状態。サンドブラストやグリッドブラストなど機械を用いて行う
  • 2種ケレン:錆や旧塗膜の劣化は目立つが、黒皮などがない状態。ディグサンダーやチッピングハンマーを用いる
  • 3種ケレン:部分的に錆や塗膜の劣化がある状態。錆部分や劣化が目立つ部分のみを除去するため、サンドペーパーや皮スキなど手作業で行う
  • 4種ケレン:素地の劣化がほとんどなく、軽度な錆や汚れを除去したい場合。サンドペーパーや布などで軽く目粗しをする

ケレンは方法によっては工具や薬品を使用するため、コストも変動します。また、素地の状態や環境によっても適切なケレンの方法は異なり、選択を誤ると早期劣化につながる可能性があるため、正確な判断が求められます。

 

2.防錆塗料の溶剤

防錆塗料に使われる溶剤には、シンナーなどの溶剤で希釈する弱溶剤塗料や水で希釈する水性塗料などがあり、種類によって耐久性が異なります。そのため、塗料を選定する際は、樹脂だけでなく溶剤の種類も考慮することが重要です。

また、塗料には1液型と2液型があります。1液型の方が低コストですが、耐久性が低い傾向にあります。このように、塗料は使用する溶剤の種類によって特徴やかかるコストが異なるため、注意が必要です。

使用する溶剤の種類は塗布する場所によって異なり、必要以上に耐久性を長くしようとしてもその分コストがかかるため、適切な塗料を選定する場合は、塗装のプロへの相談がおすすめです。

 

3.膜厚の目安

防錆塗装では、規定の膜厚を確保できなければ、ピンホールや早期劣化、仕様違反による検査不合格といったリスクが生じます。

たとえばC-5レベルの重防食塗装では、全体で250〜1000μm、通常の防錆塗装では150〜200μmが目安とされています。また、海沿いの鋼構造物や屋外タンクなど、腐食性が高い部位では、より厚い膜厚が必要です。

適切な防錆塗装は環境や劣化状態に合わせることが大切

防錆塗装の効果を最大限に引き出すには、腐食環境や素材の劣化状態に応じて塗料や下地処理を選定することが重要です。ISOやJISの規格に沿った仕様設計に加え、素地の状態確認や塗料選定といった基本を押さえることで塗装品質を大きく左右します。

製品や環境に適した防錆塗装の仕様見直しを検討している方は、本記事を参考にしてください。なお、弊社では現地調査から塗料選定、施工までの一貫対応が可能です。豊富な施工実績をもとに環境に最適な防錆塗装を実施いたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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