工業用塗料の適切な選び方は?塗料別のメリット・デメリットもご紹介

産業機械や部品の塗装では、塗料の選定が品質・耐久性・コストに関わる重要な要素です。塗料は顔料・樹脂・希釈剤の組み合わせによって性能が大きく異なり、特に樹脂の種類が性能に直結します。そのため、用途に合わせた塗料選定ができなければ、期待した性能が得られず、重大な問題を引き起こすケースも少なくありません。

本記事では、代表的な上塗り塗料を樹脂別に5つ紹介し、それぞれの特性やメリット・デメリットについて解説します。また、塗料の選び方も解説しているので、塗料選びにお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

上塗り塗料の代表的な種類

工業用塗料は使用する樹脂の種類だけでなく、「水性・溶剤・UV・粉体」「1液・2液」「焼付・常温硬化」など、幅広く項目で分類されます。ここでは、上塗りに使われる代表的な塗料を、樹脂別に5種類紹介します。

  • アクリル塗料
  • ウレタン塗料
  • シリコン塗料
  • フッ素塗料
  • 無機塗料

ただし、価格や耐用年数は用途・使用環境・塗装系で大きく異なるため、後述する内容は一般的な傾向です。詳細は各メーカーの仕様をご参照ください。

アクリル塗料

アクリル塗料は多くのメーカーが取り扱っており、他の塗料と比べて初期コストを抑えやすい特徴を持つ塗料です。ただし、一般的に耐久性は低く、色あせや艶落ちが早いため、長期的に使用する製品ではランニングコストがかさむ可能性があります。

一方で、2液型やUV硬化型といった高機能タイプもあり、速乾が必要な場合や外観を重視する用途では有効に働きます。アクリル樹脂は耐久性の観点から、屋内部品や短期使用の金属製品に最適です。建築物の外壁塗装では5〜8年程度の耐用年数が期待できますが、工業用途では使用環境によって大きく異なります。

ウレタン塗料

ウレタン塗料は、アクリルに比べて耐候性の高さに特徴があり、コストと機能性のバランスの良さから工業用途で使用されやすい塗料です。ウレタン塗料は高い汎用性に優れており、たとえば以下のような機能性があります。

  • 耐摩耗性
  • 密着性
  • 柔靭性

ただし、シリコン系やフッ素塗料と比べると長期的な耐候性は劣っており、屋外使用では黄変や劣化のリスクが生じます。また、溶剤規制への対応も必要です。

一般的なウレタン塗料は熱に弱い傾向があるものの、耐熱ウレタンやポリイミド変性ウレタンを選定すれば、高温環境でも使用可能です。ウレタン塗料は橋梁、航空機の部材などにも使用でき、中長期的な耐候性と美観、柔軟性をバランスよく発揮したい場合に適しています。

シリコン塗料

シリコン塗料は、耐候性や耐熱性に優れており、屋外環境や中長期の使用を想定した部品に適しています。産業機械や金属用途では、200~600℃の高温環境に対応する耐熱シリコーン系と、常温乾燥が可能なシリコン変性樹脂塗料に大別され、それぞれ以下のように用途や特徴が異なります。

耐熱シリコン塗料

常温乾燥型シリコン変性塗料

用途

・排気管やエンジン周辺部品、煙突、ボイラー、工業炉など

・高温環境にさらされる金属部品や製品に使用される

・外壁、産業機械の外装、金属カバー、配管、防錆が必要な一般金属部品など

特徴

・200~600℃程度の環境にも耐えられ、耐熱性に優れている

・高温でも塗膜が炭化しにくい

・酸化による変色や剥がれを防ぎやすい

・耐水性や耐候性に優れ、美観性に優れ、屋外環境で使用される製品や建物に適している

・常温乾燥のため、工業ラインや現場施工でも対応しやすい

弱点

・室温では硬化できないため、高温環境で使用する製品向け

・光沢や色保持性は低い傾向にあり、美観性が必要ない製品や部品への使用がメイン

・高温部品には向いていない

・品種が多いため、自社製品や部品に適した性能や特徴を持つ塗料を選定する必要がある

シリコン塗料は塗膜が硬くて耐摩耗性にも優れていますが、熱膨張・収縮や衝撃・振動によっては割れやすくなるため、可とう性の低い素材や振動部位への使用には注意が必要です。また、膜厚が厚すぎるとクラックの原因にもなるため、膜厚管理も重要です。

関連記事:塗装における膜厚の重要性とは?推奨膜厚や主な測定方法を解説

フッ素塗料

フッ素塗料は、シリコン塗料を上回る高耐候性・低汚染性・すべり性・耐薬品性・非粘着性を備え、厳しい環境下でも美観と性能を長期間維持できる塗料です。工業用途では、溶剤型2液フッ素・焼付フッ素・粉体フッ素があり、性能や価格、プロセスに応じて使い分けられます。主な特徴や違いは以下の表のとおりです。

溶剤型2液フッ素

焼付フッ素

粉体フッ素

硬化方式

主剤+硬化剤を混合し常温硬化 高温加熱(150〜250℃程度)で硬化 粉体を静電塗装し、加熱溶融で硬化

塗膜の特徴

薄膜でも均一、美観に優れる 高硬度・高耐久

薄膜の形成が可能

厚膜で耐久性・耐候性が高い

主な強み

施工性が良く、現場や工場で使いやすい 高い密着性

耐摩耗性

長期耐久

VOCフリーで環境対応

厚膜による高防食性

弱点・注意点

有機溶剤使用

→VOC規制対応が必要

高温焼付設備が必要

コスト高

厚膜のため細部やクリアランス部には不向き

適用例

建築外装、産業機械の外装、金属部品 自動車部品(ホイール、外装)、家電外装 橋梁、プラント、鉄骨、大型構造物

コスト感

材料費や溶剤処理費も含めて中〜高 焼付ライン必須のため、設備費用など含めて高い 初期コストは高いが、総所有コストで有利になりやすい

フッ素塗料は工業や建築用途以外にも、医療・食品・半導体機器の部品や設備にも利用されています。塗膜が硬いため、クリアランスが厳しい部位ではチッピングしやすい点や、初期コストが高い点は押さえておきましょう。ただし、コストは総所有コスト(塗替えサイクル、工数、停止損失)で評価すると、中長期的なコスト削減につながるケースもあります。

なお、フッ素塗料はPFAS規制に伴い、環境対応型フッ素樹脂塗料や代替塗料の需要が高まっています。

無機塗料

無機塗料は、今回紹介する5つの塗料で最も高い耐候性を持つ塗料です。ガラスや鉱物由来の成分を主成分とし、紫外線や熱による劣化を抑制できます。特に長期間屋外で使用される装置や構造物では、品質維持や長寿命化に大きく貢献します。

一般的な有機塗料に比べて塗料単価が高く、大ロット・大型製品では導入コストに注意が必要です。一方で、長期間の防錆性が求められる場合は、塗替えやメンテナンス頻度を押さえられる観点から、トータルコストで有利となるケースもあります。

【金属塗装】塗料の選び方ガイド

工業塗装として金属製品の塗装に最適な塗料は、以下のような手順を押さえて選ぶと効果的です。

  1. 使用環境(温度・屋内外・腐食・薬品・UV、など)
  2. 基材(鉄・アルミ・ステン・亜鉛・めっき・銅・酸化皮膜・パッシベーションの有無、など)
  3. 下地処理(脱脂・活性化・化成・ブラスト、など)
  4. 塗装方式(粉体・溶剤・静電・焼付、など)
  5. 膜厚・クリアランス
  6. 規格(社内・顧客・法規・VOC)
  7. コスト(材料・工程・歩留まり)

また、塗料の特性も理解したうえで製品に合った選定を行うことが重要です。

ここでは、製品の見た目や保持に大きく影響する耐久性、機能性、色・艶(つや)の観点での選び方を解説します。

1. 耐久性で選ぶ場合

工業塗装において耐久性は、製品寿命に直結する重要な要素です。耐久性の評価には、促進耐候試験(QUV・キセノン)・塩水噴霧・サイクル腐食・耐薬品性などの試験結果をもとに比較する必要があります。また、以下の環境面を考慮すると、より最適な塗料を選定できます。

【確認するべき環境項目】

  • 屋外曝露:促進耐候試験の光沢保持率や色差、チョーキングの有無を参考にする
  • 温湿度:耐湿試験や促進耐候試験の結果を参考に、膨れの発生有無や膜下の腐食進行度、未着性低下の有無などを確認する
  • 塩害:塩水噴霧試験、サイクル腐食試験を参考に、錆の進展や膨れの有無、赤錆・白錆の発生状況を確認する
  • 結露サイクル:結露試験や複合サイクル試験を用いて、露点差による膨れやはじきの発生有無、下地腐食の進行度などを確認する

耐久性を検討する場合は太陽光・紫外線だけでなく、温度サイクルや飛石・砂塵、洗浄薬品の影響も評価することが重要です。

2. 機能性で選ぶ場合

塗料にはさまざまな機能性があるため、製品の使用環境や求められる性能に応じた選定が重要です。同じメーカーかつ樹脂系が同じであっても、機能性は大きく異なります。工業塗装で押さえておくべき機能性は、以下のとおりです。

  • 防錆性:塗料単体で十分に発揮できるわけではないため、下塗り・中塗り・上塗りを総合的に考える
  • 耐熱性:温度帯によって選定する。例えば100℃程度であれば、常温乾燥型シリコン、200℃以上であれば、耐熱シリコーン、400℃以上であればフッ素系がおすすめ
  • 遮熱・断熱性:色による反射率や膜厚によって効果は異なるため、塗装仕様と塗料の性能から総合的に判断する
  • 電気絶縁性・導電性:電子機器やモーター部品へ塗装する際には、不良や故障を防ぐために確認する必要がある
  • 滑り性:搬送ラインや摺動部品などでは、製品品質に影響を与える恐れがある
  • 耐薬品性:医療機器や化学プラント設備は耐薬品の機能がなければ、素地の早期劣化につながる
  • 食品衛生適合:食品機械や飲料系、食品衛生法に関わる製品の塗装では、食品の品質に影響するおそれがあるため確認する必要がある

塗装を外部に委託する場合は、さまざまな塗料を取り扱っている業者を選ぶことで、目的に合致した仕様選定とコストを両立できます。弊社でも塗装を請け負っており、製品・使用環境に適した塗装方法や品質管理を行っています。工業塗装でお悩みの担当者の方は、ぜひご相談ください。

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3. 色・艶で選ぶ場合

塗装後の外観を重視する場合に、色・艶は重要な選定基準です。色・艶の観点では、以下のポイントを押さえておくと最適な塗料を選びやすくなります。

  • 規格:RALやマンセル表色系が一般的に使用されている
  • 顔料種類:有機顔料は鮮やかで選択肢が豊富だが、紫外線や熱で退色・黒化しやすい。無機顔料は低彩度でも耐候・耐熱性に優れている。高温環境下では無機顔料を含む塗料がおすすめ
  • コスト:濃色やパール・メタリックは高価かつ供給安定性の確認が求められる

また、艶も外観の印象に大きく影響する要素です。塗料によっては艶無し塗料や7分艶塗料といった種類があり、塗り方や硬化条件で変動します。そのため、艶は一定期間屋外で使用したあとの状態を光沢保持率として数値化し、評価することが重要です。

汚染性と清掃性の観点も判断基準として求められます。艶あり塗膜の方が汚染されにくく、清掃性に優れる特徴があります。

まとめ|製品や使用環境にあわせた塗料選びがポイント

塗料は樹脂の種類だけでなく、硬化方式や溶剤タイプなど、複数の要素を考慮したうえで選定する必要があります。特に工業塗装では、使用環境・基材特性・機能要件も含めて選定しなければ、期待した効果が得られません。

弊社では、多数の塗料を取り扱っており、製品や使用環境に応じた塗料選びを行っています。自社での塗料選びにお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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